印刷つれづれ「ニセ札づくり」

工場を見学させて頂くと、記念にそこの製品をくださる場合が多い。

大分、臼杵市の醸造メーカーでは見学後、「サラダ・ドレッシング」をくださった。
ビール会社、東京大森工場の見学では、あとでビールを飲ませて頂いた。
出来立てのビール、それは、それは旨かった!☆。
すっかり、そのメーカーのファンになった。

20年ほど前、紙幣を作っている大蔵省(現:財務省)印刷局彦根工場を見学した。
印刷局から日本銀行が受け取ると、晴れて日本銀行券になるのだそうだ。 それまでは単なるモノだとのこと。

それにしても見学の記念品、

そこでは、な〜んにもくださらなかった! 
顧客意識が薄いのだろうか。
ほんの少しの製品で、見学者全員を熱烈なファン、永遠の顧客に囲い込むことが出来るのに・・・。

生活に印刷は、空気のように気付かない必需品。
中でも紙幣ほど生活に密着した印刷物はなく、「ニセモノか本物か」で国民が戸惑ってはならない。

その昔、ニセ札は軍事戦略にも用いられた。(北朝鮮は現在も使っている)
大量の贋造紙幣を予め敵国に投入して経済かく乱を誘発、混乱に乗じて攻め込んだ歴史もある。

例えば150年ほど前のクリミア戦争。
ロシアで頻発した偽造を防ぐため、イワン・オルロフが考案し、ロシア印刷局が採用した「オルロフ印刷機」。
ドイツのケーニッヒ・バウアー社製「ザンメル印刷機」。
どちらも、紙幣にある画線模様が途中から別の色に変わる。
細い一本の線、色が変わっても刷り合わせの狂いが全くない、というスグレモノ。
お札がたやすく敵国に偽造されることに 対抗して開発された特殊な印刷機だ。

大半の印刷会社は、以前は紙幣の印刷が「技術的には」可能だった。
平成16年11月から紙幣偽造防止の更なる強化のため、日本政府は紙幣デザインを一新、いまのデザインになった。

旧デザイン紙幣が回収された分、新紙幣と入れ替えているという。
お札は平均的に
一万円札で3〜4年程度、
五千円札と千円札は、つり銭などのやり取りが多いこともあって1〜2年程度と、比較的寿命が短いという。

旧デザイン紙幣も相変わらず使えるが、偽造防止のためには一刻も早く新旧を入れ替えるべきだ。
ところが、新紙幣の印刷が間に合っていない、との有益な情報を得た・・・!☆
早速、「渕上印刷にお手伝いをさせてください」と手を挙げ、お願いをしてある。

今日のリュウさん通信、お題は「ニセ札づくり」。

イラスト
画:奥村 久幸

ニセ札は作れない。
まず、紙幣用の紙が手に入らない
紙幣用紙は「みつまた」、「マニラ麻」などが主な原料。
当時は大蔵省印刷局専属の製紙工場で作られた。

民間で紙幣用紙を作ると罰せられる。
紙幣と同じ手触りで、紙幣ではない紙は身の回りに無い筈だ。
本物とニセものは手触りが違う。
ニセ札は金融機関の窓口などで、手先の触覚で発見されるケースも多いようだ。
ニセ札づくり、最初の関門は本物と同質の紙幣用紙が手に入らない。

紙幣には「すかし」が入っている。
過去にあった某ニセ札事件で、犯人は「すかしを印刷していた」と報道された。
「すかしらしく」は出来ても、印刷工程ですかしを入れることはできない。
紙を作る工程で「すかし」を入れるので、すかしは紙そのものだ。
卒業証書や証券類に、すかしの入ったものがある。
これを「白すかし」と称し、紙幣以外の用途には認められている。
特別注文で民間の製紙メーカーが作ってくれる。

「黒すかし」技法は紙幣に限られ、一般用に用いるとこれまた罰せられる。
ニセ札づくり、次の難関は本物と同じ「すかし」が入った紙が手に入らない。

リュウさん通信、ここまでの話は45年も前という年代もの。 いまの技術は、比べようもなく進化している。

photo

日本銀行鹿児島支店に申し込むと、「日銀の機能・業務」や、「紙幣の偽造防止技術」などをビデオで見せてくださったり、広報ルームほかを無料で見学できる。
行ってみると、美しい女性の、親切で分かり易い説明。ここでは、糸状に細分化されて使えない日銀券を惜しげもなく、くださる。
彦根工場から20年・・・、
またたく間に日銀券とその女性のファンになった。

紙幣のことも平気で、情報提供されている。
photo これだけの機密を開示できるのは、真似されない自信があるからだ。
さまざまな偽造防止対策がすさまじい。
紙幣を斜めにすると、な、なんと! 見えなかった文字が浮き出てくる。
複写機のコピー能力を越えたマイクロ文字
やれ、ホログラムだの、肖像のバックにも白すかしと黒すかしの両者を組み合わせた精巧な「白黒すかし」技法が使われている。

これでは歯が立たない!

新デザイン紙幣印刷のお手伝い、我が社の申し出を取り下げることにする。


 
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