「父さんの宝もの」


交互に女、男、女、男と、四人の子を授かった。
このタカラモノ、嫁に行ったのが居るかと思うと幼稚園に行ってるのもいる。

子の挙式に親は、何がなんでも出席する。
それなのに、親の式には四人のうち、一人としてカオを出しゃしない。
子供というものは誠に勝手なものだ。
コイツラのお蔭でフルムーン旅行など、まだ当分できない。
実現するころには若夫婦の方がさっさと旅に出るだろう。
押し付けられたじぃちゃん・ばぁちゃんは、孫のお守りをさせられる。

日本の少子化。子供の数は昭和五年に平均で四.五人だった。
今は一.七人。二.一人以下だと人口が減ってゆく。
神戸大学の試算では、このまま推移すると一億二千万人が百五十年後は五百万人になるという。
百八十万人の鹿児島県は七万五千人になる比率だ。
日本は滅亡してしまう。

昨年暮れ、山口県の藤村さんに双子が生まれ、十七人という日本一の子宝になられたそうだ。
祖国の将来を考えるとき、藤村さんご夫妻にこそ国民栄誉賞をお贈りしたい。

女史パウロ会刊「父さんの宝物」は岩手県、山浦玄嗣医師の著。
なだいなだが次のような巻頭言を寄せておられる。
「『ぼく働く人』あるいは『ぼく稼ぐ人』になってしまった父親の、現代になんと多いことだろう。教育のすべてを、母親と学校まかせにしてしまうなんて、父親の義務の放棄だ」

著者山浦先生はまえがきで、「父親はみずから父親になるのではなく、子供によってむりやりに父親にならされるのである。父親は子供の偉大な師であるが、子供も実は父親の生みの親である」といっておられる。
ご本人は八人のお子さまをお持ちだ。
子育てに奮闘される痛快な物語が展開する。

宝物はご夫妻共有のはずなのに、書名を「父さんの」とされたのは何故だろう。
この父さんには、もう一人、大事な宝物がおられるからだろう。

(南日本新聞夕刊、平成2年1月31日)

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南日本新聞夕刊休止を惜しみ、執筆分をリバイバル掲載。
この「父さんの宝もの」も、夕刊「思うこと」に書かせて頂いたもの。
言語明瞭意味不明瞭な作品群の中には、気に入っていたものもある。
「山々の形」も好きで、おととし6月頃、リュウさん通信に「人民こそ主人公」で再デビューさせた。


≪関連する記事≫
みてきた中国:「人民こそ主人公」2の1
みてきた中国:「人民こそ主人公」2の2



 
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四角なスイカの作り方


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写真処理:愛甲理一朗

実がついたら、透明ガラスを箱にして囲んでおく。
成長の行く手をガラスがはばみ、ついには四角いスイカができあがる。

枠にはめ、伸びる芽を押し止めた西瓜はいただけない。胡瓜は細長く、西瓜はまぁるいのがいい。
日本はアメリカを追いかけてさえいれば成長でき、独創性はあまり必要なかった。いつの間にかトップを走るようになり、前に誰もいない。いまこそクリエーティブな日本人が必要だ、と言われだして久しい。
四角なスイカ、カタにはまった創造力乏しい人材をつくらないためには、その人の特長を周囲がよく伸ばしてあげることだと思う。
伸ばすためには前向き、肯定的に対処し、あれはダメ、これもダメと否定、やる前から「どうせ駄目だろう」のマイナス志向な周囲では、四角なスイカができあがるということだろう。
子育てや人づくりで、次の話は楽しくうれしい。

ミミズをみつけた男の子がどこまで這っていくのかと夢中で、始業ベルが鳴っても校庭から動かない。
「無理やり教室に連れてきたくない。その子に、ミミズがどこまで行くのか見届けさせてやりたい」と、小二二女の担任はおっしゃる。
この教師は、スイカを四角にしたくないと努力しておられる。

四番目の子、二男の幼稚園ではモンテッソーリ教育を取り入れている。食事も入浴もこどもの生活は、すべて「遊び」だ。教材との遊びに熱中する中から、個性の 芽を引き出す教育方法だという。一斉に同じ遊戯をさせたり、はみでたこどもを叱ったりしない。四角なスイカをつくろうとしていない。

冒頭の方法で四角なスイカがつくれるかどうか、試していない。
あのやり方だと、スイカは四角になる前にクサッてしまうだろう。

(南日本新聞夕刊、平成1年12月6日)


南日本新聞の夕刊が、2月末をもって廃止となる。
残念だが、このところの世情では止むを得まい。

夕刊にはエッセー・コラム「思うこと」がある。
週1ペースで一人10本。1クルー、購読者6人が執筆。

自分も書かせて頂いた。
このコーナーは随筆の場だ。
夕刊はその日の疲れを癒し、くつろいだ時刻に読む。堅苦しい内容は避けた方がいい。
しかし、ついつい構えてしまい、緊張この上ない。
「言語明瞭意味不明瞭」なものばかり送稿したhappy01sweat02

中には気に入ったものもある。
今日はその中から、「四角なスイカのつくりかた」

 
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